肌寒さを感じて目を覚ました俺は、ハッと息を呑みながら、隣にいる筈の彼女の方に顔を向けた。そこには一糸纏わぬ姿のジェンドが、すぅすぅと寝息を立てて眠っていた。
「夢……だったのか」
小さく呟いて、ほっと胸を撫で下ろす。だけれど、喉元には未だ夢の嫌な感触が残ったままだ。不安や恐怖、そして喪失感。そう言った負の感情をぬぐい去るように、彼女の髪の毛をそっと撫でてやる。
不意に彼女の睫毛がピクッと動いて、大きな瞳がそっと開いた。
「ごめん、起こしちゃった?」
口元に微笑みを浮かべて、大して悪びれた風もなく謝ってみる。それが癇に障ったか、彼女は少しだけムッとした顔で「まだやりたらないのか?」と返してきた。
「そんなんじゃないって」
ニヤニヤしながら答える俺。彼女は俺の手首を軽く掴むと、「バーカ」と言いながら払いのけて、そのまま背中を向けてしまった。
我ながらとんでもない相手に惚れてしまったものだと思う。だけれど、今こんなに幸せな気分でいられるのも彼女のお陰で、彼女と出逢えて良かったと思う気持ちは一度も揺らいだ事がなくて。これから何があろうと、二人がどういう道を選んだとしても、その気持ちはずっと変わらないと信じている。
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fin
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