この街に来たばかりの頃に精霊節の話を聞いた事がある。 三年に一度だけこの大地に宿る精霊達が姿を現して天へと昇っていく。 降り積った人間の罪を空に連れて行くのさ--不思議そうに首をかしげる俺達に誰かが語りかけてくれた。 その話を聞いた時、俺はシアンベルブへと向かう聖樹<ジェドの木>の光を思い出していた。 あの時、そこにいた誰もが強い力で結ばれていたような気がした。 それが何かは解らないけれど、とても暖かくて、とても優しくて、とても……嬉しかったんだ。 何の分け隔ても無くアイツと繋がっているような気がして……とても嬉しかった。 「次の精霊節、一緒に見ような」 少しだけはにかみながら、背を向けた彼女に向かって呟いてみた。 彼女はゆっくりと振り返って、口元に微かな笑みを浮かべながら「ああ」と応えてくれた。 |