今回はまず“透明な貴方と踊るワルツ”の裏話をちょこっと語りたいと思います。後書きにも書いたのですが、とにかくこの作品は明確なプロット(話の筋や構想)がないままに書き始めてしまったので問題山積でした。まず第一に持ち上がった問題は「何が二人の心を分け隔ててしまったのか」という点です。一番最初に思いつくのはやはり「浮気性なカイに対するジェンドの嫉妬」なのですが、これでは2人が別れるような状態にまで至る原因としては弱すぎるのです。彼にとって他の女の子に自然と目が行ってしまうのは日常茶飯事ですし、ましてその子に入れ込んだりはしないという事は何よりも彼女が知っていますから、一時的な喧嘩や不機嫌の原因になっても別れるまでは発展しないだろう、と。かと言って過去の心の傷を掘り起こすのはやりすぎだと思うし、この小説のコンセプトである「完全な和解後の彼ら」から外れるものとなってしまいます。そこであまり人が手をつけていない「倦怠期」の方に視点を向けてみました。まあ他の人が手をつけていないのにはそれなりに理由がある訳で、描写が難しい以前の問題として、確実に読者が嫌うキャラクターを描かなければならなくなるのです。今回はカイですが、見事にデリカシーの無い嫌な男と化してしまったわけで。極力彼の明るい面というのを前面に出したつもりですが、少しバランスが悪くなったかもしれません。第二に、どうやって仲直りさせるかというのは最後まで悩んでいました。もうこれには全然アイデアが浮かばなくて……そこで苦し紛れに書いたストーリーのアウトラインはこんな感じです。『一人でラシャの丘にやってきたカイ。そこにジェンドは現れない。誰もいなくなった中で闇に包まれたラインハルト山をじっと見つめる彼の前に蒼白い光が現れる。そしてその光は子供のような声でこう彼に囁いた。「変わらない人間なんていないよ。問題は君がどう変わっていくか。どうやって自分を高めていくのか。違うかい?」それを聞いて目が覚めたカイはジェンドの待つ家へと急いで帰っていった。そしてジェンドに謝罪し、彼女を抱きしめた瞬間、窓の外で無数の蒼白い光が天に昇っていくのだった……』第一稿をコレで書いて見直した瞬間、ショックのあまり思わず茫然自失としてしまいました(笑)これは「ET」ですか!?それとも「ニューヨーク 東8番街の奇跡」ですか!?という事で即刻選択&デリートv結局最後まで答えが見つからないカイという事で話を落ち着けました。まあ現実問題としてコレだけ短いスパンで劇的な変化というのは殆ど起こらないし、それだけのショッキングな出来事を盛り込めていないので妥当な線かと判断しました。現在トップに飾っている宣伝CGは第一稿を書いた直後に作成したものですが、ここにある「結局、俺は色褪せる事の無い写真の中で微笑んでいるだけだった」というテロップからヒントを得てエンディングのプロットを作ったと言っても過言ではありません。私の大好きなJoanne Hoggの“kokoro”という曲の中に『失った貴方の写った写真は色褪せていくけど、私の心の中の貴方は色褪せる事無く鮮やかなまま』といったニュアンスの歌詞がありまして(JASRACに睨まれたくないので海外の歌詞サイトに直リンしておきます(^^;)、だったら『過去の自分にいつまでもすがりつく現在の自分』というのはどうだろう、と思いつきまして、そこから一気にイメージをまとめる事が出来ましたv先のJoanne
Hoggの曲を書いたのは満田康典という御方なのですが、本当に満田さんの曲にはいつも支えられています。基本的に、いつも彼の曲を聴きながらイメージ作りをしていますので。という事でやっとこさ完成。ワードにコピーして(普段はテキストエディタを使って打っているので)文字数を調べたら、これが何と原稿用紙22枚分!我ながら良く書いたナと(笑)そして思ったのは「やっぱりジェンドを書くのは楽しいな」って事。基本的に彼女は直情的な所があって感受性が豊かですので、彼女の心の変化を考えてるのって物凄く楽しいんですよ。怒ったり笑ったり泣いたり……そんな彼女が大好きですv HPリニューアルに伴って作品解説を書き直したのですが(何か支離滅裂な事を書いてたので(^^;)、そこで原作とオリジナル設定の連結を示した簡易年表を作ったんですね。その為に古い作品(特にシオイリ系)を読み返していたのですが……何かね、自分で書いておきながら思わず泣いてしまいました。こう見えても(ってか見えないか;笑)私涙もろいんですよ……もう映画とか見ながらボロボロ泣いちゃうんですね。で、自分で書く小説ってのは自分のツボが解って書いてるんで物凄く感情移入しちゃうんですよ。シオイリなら特にシオンに。カイジェンなら特にジェンドに。でもそんな自分が大好きですv以前アメリカ文学の恩師が「映画とか見てて泣いてる自分って可愛いんですよねぇ。」と恍惚とした表情で語って下さいましたが(笑)、それ、よく解ります。別に辛い事や嫌な事があっても泣かない人なんですが、何故か感動的なストーリーには弱くて(^^;「ここは泣かせようと作ってある!!」って解っていながら泣いてしまう自分が可愛いです(笑) 最後に、“透明な貴方と踊るワルツ”の完結編“I wanna see you smiling at me”の第二稿がようやく完成しました!大幅加筆でボリューム二倍の原稿用紙12枚になってしまい、隠すのもどうかな、と思ったのですが、でもやっぱり隠しちゃいます(ヲイ)微調整が終了しましたらアップしますので、パスワード、頑張って解いてやってくださいネv |
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